※以下ネタバレ含みますので、まだ見られてない方はレビューのみ御覧ください。
では、こちら解説していきたいと思います。
本当に長い上に解り辛い映画です。登場人物が多く誰が味方か敵か、重要か重要でないかわざとわかりづらくしていると思います。
ラリった探偵が元カノに依頼された不動産王の失踪事件を調査する件
これが物語の基本です。
元カノは不動産王(ミッキー・ウルフマン)の愛人となったシャスタが、不動産王の妻と恋人の悪事を暴いて欲しいと依頼するが、捜査を開始すると同時にドッグは殺人の濡れ衣を着せられる。
その後、シャスタも疾走してしまい、土地開発に絡む国際麻薬組織のきな臭い陰謀に巻き込まれていきます。
■ 主役のマリファナ中毒モミアゲ探偵、ヒッピーのドック。
■ 角刈り刑事、ビッグフットは味方と言ってもいいです。
■ 死んだはずのサックス吹き、コーイは意外と重要人物
■ 不動産王、ミッキー・ウルフマンはヤク漬け更生施設に送られ、マインドコントロールされる。
■ ドッグの元カノで不動産王の愛人、シャスタ
まぁ基本こんな感じを理解しとけばよいかと。
そして犯人を当てようとしてはダメというか、犯人は誰だ?って物語じゃないと思います。
最後の謝罪のしあうシーンと結末
これは、ビッグフットはある意味ドックをハメて、危険な目に合わせて殺人までさせてしまった負い目からですね。
探偵はビッグフットが持ちだしたブツを、更に勝手に持ちだして、黒幕のジャポニカの父親に返したから。
そして結果的に、このブツを返したことで、サックス吹きコーイは開放されて家族のもとに帰れた訳ですね。
補足するとジャポニカの父親は、娘に手を出して、ヤク漬けにした歯医者を殺します。
これ解説と書いてて解説じゃないですね。
結局色んな思惑が働いてたってわけでわちゃわちゃ感が楽しいんですけどね。
ヒッピー文化と次に進む時代の物語
しかしメッセージを読み解くと、僕は、ヒッピーの時代が終わる中で、ドックがまだどっぷり浸かっていることや、他の登場人物は抜け出し、次の時代にむかっているのが読み解けるのでは?と思います。
そもそもヒッピーとは・・・
伝統・制度などの既成の価値観に縛られた人間生活を否定することを信条とし、また、文明以前の自然で野生生活への回帰を提唱する人々の総称。(Wikipediaより)
この映画でこの視点に焦点を当てると、主人公ドックは、60年代的ヒッピー文化の終わりおいても私立探偵をし、もちろんマリファナやりまくりヒッピー文化の中にいます。
しかし、ドックが話の最後に救う人物であるコーイ・ハーリンゲン(オーウェン・ウィルソン)は
60年代に彼は妻と破滅的にドラッグをやりまくり楽器の演奏で小金を稼ぐというヒッピーなライフスタイルを送るが、彼は政府に利用され政府と民衆の間に立つという60年代的な板挟みになった挙句に社会的に消され家庭を破滅させられます。
しかしドックの取引により、コーイが妻と子どもの元に戻りAMEXカードを持つ、世間で言うまっとうな人生へと踏み出すことができました。
AMEXカードは現代的な消費主義のアメリカンライフスタイルの象徴と捉えることが可能ですし、そんな60年代ヒッピー的ライフスタイルからコーイは抜け出して行きます。
ミッキー・ウルフマンも「住宅は無償であるべきだ」とのヒッピーもびっくりな浮世離れした考えから財産も寄付しようとしますが、最終的にはビジネスに復帰します。
戻ってきたシャスタも「わたしはインヒアレント・ヴァイスだ(内なる欠陥がある)から保険は効かない」「よりを戻した訳じゃないのよ」とこの先ずっとドックと一緒にいるわけではないようなことを言います。
ビッグフットもドックのお陰でトラウマであった相棒殺しの犯人へ復讐を果たし、毛嫌いしていた海辺の路上生活者ども(ヒッピーたちのこと)についてもマリファナの草をそのままむしゃむしゃすることによって乗り越えたと言えなくもない。。。笑
では、ドック自身はどうか。何も変わっていません。取り残されてしまいました。
実はドックがインヒアレントヴァイスかも?
麻薬取引組織から見ると、探偵と繋がっているシャスタが内在する欠陥のように思いますが、実際はドックの存在です。
さらに、説明したように、世界がヒッピー文化から抜け出す中、ドックはまだ抜け出せてません。
「インヒアレント・ヴァイス」は時代にたった一人で取り残されるドックという取り残された欠陥を表現している物語と捉えることができ、かなり深いですね。
色々な解釈がありますし、正解はありません。
皆さんが色んな読み解き方をできるヒントやきっかけになれば思います。
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